社殿には、かつて可愛がられていたであろう猫の写 真がびっしり。
 
山形県東置賜郡高畠町高安問い合わせ 高畠町商工観光課 0238-52-1111車 東北自動車道福島飯坂ICより、国道13号を経由して約1時間 電車 JR奥羽本線高畠駅より、タクシーで約10〜15分
 
 ペットを飼っている人たちを大別すると犬派と猫派に分かれるという。山形県東置賜郡高畠町には、そんな犬好き、猫好きの人たちによく知られたお宮がある。高安集落のひっそりした山ぎわの農道をはさみ、猫の宮、犬の宮という二つのお宮が向き合うようにしてあるのだ。山側には犬の宮があり、社殿には犬のぬ いぐるみや愛犬の写真が貼られている。猫の宮は里側にあり、同じように猫の写真がベタベタと社殿に貼ってある。これらはペットを供養するために納められたものなのである。いつごろからペット供養のお宮として知られるようになったのかは定かではないが、そもそもこの二つのお宮は、ある伝説に登場する犬と猫を供養したものと伝わっている。
 延暦年間のころ(七八二〜八〇五)、高安に猫好きな庄屋がいた。庄屋は文字通り猫可愛がりをしていたのだが、不思議なことにどんなに可愛がっていても、猫はいつの間にか姿を消してしまうのだった。そこで庄屋は、あるとき犬の宮に猫を授けてもらえるように願をかけた。やがて満願の日、庭先に一匹の子猫が入り込んできたので、これこそ神様が授けてくれたものだろうと、玉 という名をつけて大切に飼いはじめた。玉は庄屋夫婦によくなつき、どこに行くにも離れようとはしなかった。
 そんなある日、庄屋の妻が原因不明の病気にかかり、巫女に祈祷してもらっても、どんな薬を使っても回復せず、日を追うごとに悪くなっていった。そういう状況でも玉 は妻から離れようとはせず、便所の中までついてくるので、庄屋夫婦もさすがに気味が悪くなってきた。庄屋は玉 を怪しんで、試すように妻の着物を着て便所へと入った。すると玉はすぐ側に座り、しきりに天井の方へと首をのばした。あまりにも怪しい動作をするので、怒った庄屋は玉 の首を切ってしまった。「ギャァーッ」という悲鳴とともに玉の首は天井裏へと飛んで行き、その瞬間、天井裏で激しい振動と物音がはじまった。何事かと恐れながら見上げていた庄屋の前に、しばらくすると大きな黒いものがドサッと落ちてきた。よく見るとそれは大きな蛇で、首だけとなった玉 がしっかりと喉元に食らいついて息の根を止めていたのだった。玉は人を襲うどころか、庄屋の妻を守ろうとしていたのである。このことにやっと気付いた庄屋は、妻の病気もこの大蛇の仕業だったのだろうと悟った。
 それからというもの、妻の病気は日に日に良くなっていった。庄屋は玉の心に打たれて、屋敷の隅に祠をたてて供養した。これが猫の宮のはじまりだという。
 この子猫の正体は南陽市日影にいた猫股だったとか、観音様が猫の姿となり、信心深い庄屋夫婦を守っていたのだなどといわれている。また、大蛇の正体を古狸の怨霊とする話もある。かつて高安には土地を荒らす悪い古狸がいて、庄屋の娘を人身御供として要求していたが、甲斐の三つ毛、四つ毛という二匹の犬に退治された。その狸の怨霊が大蛇となり、庄屋を狙っていたのだという。ちなみに犬の宮は、狸を退治した際に死んでしまった犬を供養したもので、猫の宮より先の時代にあったとされている。今回は猫がテーマなので犬の宮の伝説は詳しく触れないが、機会をみて紹介したいと思う。
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